西高ニュース

第3回「鈴蘭塾」が開催されました2016/03/08

1月29日(金)、母校西高において第3回「鈴蘭塾」が開催されました。
講師は、17期生で(公益財団法人)がん研究会有明病院・病院長の山口俊晴さん。
物理も数学も落第点?だった山口さんが医学の道に進んだ理由。「医者は理系か文系か?」
ご自身の進路決定に始まり節目々々での岐路選択、今日に至るまでの人々との出会いなど、ご自身の来し方を語られ、その中に現役生へのアドバイスを込められた講和に、講堂に集まった全校生徒たちは熱心に聞き入っていました。その後に行われた懇談会でも、生徒たちから熱心な質問がよせられ、和やかな中にも充実した内容で会を終えました。
また会の冒頭、今井悟校長から、17期生でコピーライターの鈴木敏朗さんが作成した今回のポスターへの謝辞がありました。
報告者 9期・嶋村輝郎
製作/17期 鈴木敏朗氏

【山口さんの講話内容】

わたしが出くわした人生の岐路選択は順番に、進学の選択(医学部)→専攻科の選択(外科)→専門選択(癌)→教授の道か大学外か、の選択と続いてきました。
 

大学および進学科の選択岐路(医学部)

数学、物理が落第点、国語、英語が得意の私は、海外に行きたくて外交官かパイロットになろうかと思い悩んでいました。
当時は結核になる人が多く、愛する妹と叔母を亡くしました。兄も腎結核、自分も肺炎と大病を患い九死に一生を得ています。そんなことに少し感ずるところがあって兄は、京都府立医大に進みました。私はというと、旺文社の模試指導で、医者は文科系の人向きと教わったことの後押しと兄の影響、そして自分自身の大病で医学への関心が高まり、一浪覚悟で医学部受験を指導の先生に伝えていました。
苦手の数学でしたが、幸運にも試験前日にやった過去問題がそっくりそのまま出た運の良さで合格できたと、今でも思っています。

専攻科の選択岐路(外科) 

理数が苦手な私は、大学に入る前は実験とか数値を扱わない、精神科あたりを選考しようと思っていました。ところが大学の実習中に、終生の恩師になる人と出会いました。
目の前でケガの傷口を颯爽と縫い合わせたその人がかっこよく、講義のすばらしさやその人柄に惚れ、外科も悪くないなと外科の道を選択。
その尊敬する恩師の誘いもあって、秋田大学医学部に付いていくことになり、そして8年後再び京都に戻ってきました。
 

専門選択の岐路(癌)

外科でも内科系、病理系とかありますが、「これからは癌だ」と癌の道を選びました。
 

教授の道か大学外かの選択岐路

府立医大に助教授で戻り、他大学の教授に応募するつもりでしたが、当時大塚にあった癌研究のリーダ的存在で外科医にとってあこがれの、がん研究会付属病院から強く誘われるままに転身を決めました、その延長として今の(公財)がん研究会有明病院での私の現在があるのです。
 

改革への挑戦

部長になったころ、病院はお台場の新築病院に引っ越しました。
建物だけではなく何か新しい改革をやろうと考え、保守的な周りの反対を押し切って、京都でやっていた腹腔鏡手術という方法を導入しました。今では当病院の売りになっています。また米国テキサス州ヒューストンのMDアンダーソンを参考に、チーム医療体制の導入を推進しました。診療科の看板を廃止し、消化器センターの名のもとにいろいろな専門分野の医師が動き、患者にとってベストな治療を提供する体制を作りました。これが今の有明病院治療体制の原点となっています。
 

最後に

これまで述べてきたように、私も高校・大学時代そして今に至るまでフラフラしてきたように思いますが、何度か選択の岐路に遭遇してきました。諸君のこれからの人生でも、何度も何度も選択の岐路が訪れるでしょう。
高校時代に思い描いた通りの人生を送っている人はほとんどいません。1年生の時も、3年生になった時も、その時々で考えるということをしてください。自分も刻々変わっているし、周りの環境も変わってきています。ですから必要とあらば、方向転換してください。
また私は、自分の来し方を振り返った時、良き友人、良き家族、良き恩師に支えられたからこそ、ここまで来られたと思っています。これらは待っていても手に入りません。自分から求める努力をしてください。
本日はご清聴ありがとうございました。皆さんの意はどの辺にあるかはわかりませんが、せめて来年くらいまでは私の話を覚えていて下されば幸いです。
 

追加

最後に社会への女性のパワーの進出についてお話しします。医学界も御多分に漏れず、優秀な女性医師がいっぱいいます。私の話を聞いた中から、一人でも女性外科医師になられる方がいたら、私の最も喜びとするところです。
 

嶋村のつぶやき

山口さんの話もそうだったし、私の場合もそうでしたが、人生岐路選択の判断材料の大きな部分を占めるのは人との出会いです。山口さんの場合も、この人と一緒に仕事をしたい、この人は尊敬できる、結果として終生の師と仰ぐ人との出会いで運命が決まったような気がします。皆さんの周りでも、好きな先生にあこがれて進路を決めたという人がいるのをご存知でしょう。人との出会い・人との付き合いはこれほどまでに大切なのです。